ダクト静圧の計算方法|必要機外静圧を求める手順と計算例
ダクトの長さや曲がり、ダンパー、吹出口などの抵抗を見込まずに機器を選ぶと、計画した風量を確保できないことがあります。ここでは、ダクト経路の圧力損失を積み上げ、機器選定に使う必要機外静圧の目安を求める方法を説明します。
このページのツールは、同じ風量・断面を使う経路の簡易計算に対応しています。計算条件を入力すると、風速、動圧、圧力損失の内訳を確認できます。
1. 静圧・圧力損失・機外静圧の違い
静圧は、流れの動圧と区別して扱う空気の圧力です。圧力損失は、空気がダクトや器具を通過するときに失われる圧力を指します。機外静圧は、機器の外側に接続されるダクト・器具などの抵抗に対応するための機器選定上の指標です。
圧力の単位はPa(パスカル)です。本ツールでは経路の損失合計に設計マージンを掛けた値を「必要機外静圧」として表示します。厳密な選定では、機器の接続条件、静圧・全圧の扱い、メーカーが示す機外静圧の定義をそろえて比較します。
2. 圧力損失を求める計算式
風量を風速に換算する
動圧 Pv = ρ × v² ÷ 2
Qは風量[m³/h]、Aは断面積[m²]、vは風速[m/s]です。角ダクトは幅×高さ、丸ダクトはπ×内径²÷4で断面積を求めます。寸法をmmで入力した場合はmに換算します。本ツールの空気密度ρは1.2kg/m³で固定しています。
直管・曲がり・器具の抵抗を合計する
局所損失 ΔPl = 個数 × ζ × Pv
必要圧力の目安 =(直管損失+エルボ損失+ダンパー損失+末端器具抵抗+付属機器抵抗)× マージン
Rは単位摩擦損失[Pa/m]、Lは直管長さ[m]、ζ(ゼータ)は局所抵抗係数です。吹出口・吸込口・ガラリ・フィルターの抵抗は、計画風量に対応するメーカーの仕様値を入力します。
ダクト寸法や風量を変えても、入力したRはそのままです。条件を変更するときは、摩擦損失線図・技術資料などを使ってRも見直してください。局所抵抗係数の初期値も、すべての形状に使える値ではありません。
角ダクトに表示する径は、2WH÷(W+H)で求める水力直径です。同じ摩擦損失になる円形ダクトの「等摩擦相当径」とは区別してください。この表示値は本ツールのR計算には使っていません。
3. 計算する経路と入力条件の決め方
- 経路を分ける:機器から各末端までの流れの経路を整理します。すべての枝ダクトをまとめて足し合わせません。
- 区間ごとに風量・寸法を確認する:分岐で風量が変わる場合、区間ごとに風速・摩擦損失を計算します。
- 直管と局所抵抗を拾う:長さ、エルボ、分岐、縮小・拡大、ダンパーなど、経路上の抵抗を整理します。
- 器具抵抗を確認する:吹出口、吸込口、ガラリ、フィルター、消音器などの仕様値と、抵抗を計上する範囲を確認します。
- 経路ごとの合計を比較する:必要な風量を流す条件で圧力損失が大きい経路を確認し、機器の特性曲線と照合します。
本ツールには区間の追加や分岐の専用入力欄がありません。風量・寸法が変わる系統は区間ごとに計算して別途集計し、分岐や異形管などの抵抗も追加してください。給気・還気が同じ機器につながる場合は、機器外のどこからどこまでを計上するか、メーカー資料に合わせて整理します。
4. 計算例:風量1,500m³/h、角ダクト350×250mm
以下はツールの初期値を使った説明用の例です。各抵抗値・係数・マージンは、実際の設計条件に合わせて設定します。
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| 風量・ダクト寸法 | 1,500m³/h・350×250mm |
| 直管長さ・単位摩擦損失 | 20m・1.0Pa/m |
| エルボ | 3個・ζ=0.35 |
| ダンパー | 2個・ζ=0.25 |
| 末端器具・付属機器 | 25Pa・35Pa |
| 設計マージン | 1.15倍 |
断面積は0.0875m²、風速は約4.76m/s、動圧は約13.6Paになります。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 直管 | 1.0 × 20 | 20.0Pa |
| エルボ | 3 × 0.35 × 13.605… | 約14.3Pa |
| ダンパー | 2 × 0.25 × 13.605… | 約6.8Pa |
| 末端器具・付属機器 | 25 + 35 | 60.0Pa |
| 純損失合計 | 上記を合計 | 約101.1Pa |
| マージン適用後 | 101.088… × 1.15 | 約116.3Pa(画面表示116Pa) |
画面の整数表示は四捨五入です。機器を選ぶときは表示値だけで決めず、計画風量1,500m³/hで必要圧力に対応できるかを確認します。
この条件を計算ツールで確認する5. 機器選定と、計算結果の読み方
最大風量と最大静圧を別々に満たすだけでは、選定はできません。計画した風量の点で、必要な圧力を出せるかを静圧-風量特性曲線などで確認します。Panasonicの換気機器の解説でも、抵抗曲線と機器特性曲線の交点から風量を確認する方法が示されています。
圧力損失の内訳を見ると、どこを見直すべきかがわかります。直管や局所抵抗が大きい場合はダクト寸法・経路・曲がり形状を、器具抵抗が大きい場合は器具寸法・形式や通過風量を確認します。
機器に内蔵されたフィルター等の抵抗が、カタログの機外静圧に既に織り込まれている場合は、同じ抵抗を重複して加算しないようにします。フィルターの初期・最終抵抗、ダンパー開度、施工条件など、採用する抵抗値の条件もそろえます。
風速バッジは、このツール内の簡易判定です。「適正」の表示が出ても、騒音・用途・ダクト仕様に応じた設計条件を満たすことまで判定していません。マージンも一律の推奨値ではなく、計算の不確かさや機器仕様に応じて設定します。
6. よくある質問
ダクトを大きくすれば、圧力損失は下がりますか?
同じ風量なら断面積が大きくなると風速・動圧が下がり、同じ係数を使う局所損失も下がります。直管摩擦損失も条件に応じて見直します。ただし本ツールはRを固定入力するため、寸法だけを変えても直管損失は変わりません。
一番長い経路だけ計算すればよいですか?
長さだけでは決まりません。曲がりや器具抵抗、区間ごとの風速によって、短い経路の圧力損失が大きくなる場合もあります。各経路を計算して比較します。
初期値のエルボ・ダンパー係数を、そのまま使えますか?
初期値は計算例です。形状・寸法比・ベーンの有無・開度などに対応した技術資料、メーカー資料から設定します。
フレキシブルダクトも計算できますか?
対象の内径・風量・伸縮状態などに合う単位摩擦損失を入力して簡易計算できます。つぶれや急な曲がりの影響まで自動で計算する機能はありません。メーカーの損失データと施工条件を確認します。
ダクト静圧の検討・設備図面のご相談
KSR設計合同会社では、空調・換気設備の計算、機器選定、設計図・施工図の作成、ダクトのルート・納まり検討を支援しています。計算条件の整理や図面作成について、お気軽にご相談ください。
お問い合わせの際は、建物用途、計画風量、ダクト図・機器資料、依頼したい範囲、使用CAD、ご希望の納期をお知らせください。資料を確認し、対応範囲とお見積りをご案内します。
KSR設計合同会社|埼玉県蕨市|Rebro・Tfas・AutoCAD対応